好き「だった」

 

 

 

何度か見てきたもう既に解散しているバンドの名前を久々に聞いた。それも良くない話題で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好き「だった」

 

 

 

 

 

 

 

「だった」 つまり過去形。好きだったもの、ひと、こと、貴方にもきっと何かしらあると思う。

 

 

 

小さい頃好きだったプリキュア、社会人になって会う機会が減り、それに比例して思いもなんだか薄れていってしまったあの人、楽しくて楽しくてしょうがなかったのに大人になるにつれそんなに興味を持たなくなってしまったこと。

 

 

 

だけど、今でもその好き「だった」時をふと思い出してしまう。その当時、確かに私は好き「だった」のだ。どうしようも無く好きで、全てが輝いてみえた。今振り返ってもキラキラ眩しいくらい、好き「だった」時の記憶は、昨日の事のように思い出せるし、何度でも戻りたいと考えたし、戻りたくないなとも思うし、キュッと切なくもなるのだ。

 

 

 

 

どうして好きじゃなくなってしまったんだろう、そんなことが分からないこともたくさんある。ただなんとなく日々を過ごしていくうちに、歳を重ねるうちに興味が薄れてしまったり、はたまたもっと興味を持ってしまうことが現れたり。変わっていく姿を見たり、嫌な部分を見てしまったり、そもそももう会う機会がなくなってしまったり。

 

 

 

 

けれど、私は厄介なことに好きじゃなくなってしまっても、なんなら憎みたくなるほど嫌いになってしまっても、好き「だった」時のことまでは否定できないし、嫌いにもなれない。

 

 

 

だって好きだったんだもん。大好きで大好きでしょうがなかったし、毎日が楽しくて、明日が待ち遠しくなったり、明日なんて来ないで〜って思ったり、今この瞬間がずっとずっと続けばいいのに…なんて自分勝手なこと本気で思ってたんだもん。

 

 

 

 

これはひとつの好き「だった」にまつわるお話なのだけど、好きなバンドのメンバーが脱退して、新メンバーが加入したって、それは私の好きだった頃とは違う。いくら4分の3が同じメンバーでも、いくら曲を作ってる人が変わらなくても、歌っている人が同じでも、違った。もうそれは別物だった。周りは応援していた。曇りなくまた以前と同じように「頑張れ!」「応援してるよ!」なんて言っていた。だけど私は「もちろん着いてくよ!」なんて言えなかった。そんなこと言えるようになりたかったけど、どうしても言えなかったし、やっぱり言いたくなかった。過去は全部置いて進もう!みたいな感じがして怖かった。お前が好きだった頃はもう終わりだよ、切り替えて。なんて言われてる気がした。自分だけが過去に取り残された気分だったし、好きな人が決めたことを応援するのが正みたいな風潮が怖くて気持ちが悪かった。その結果、好きなバンドが好き「だった」バンドに変わった。そんな言葉に変えたくなかったのに、変えてしまった自分がいた。変えざるを得なかった。

 

 

 

 

新体制、1度だけ見に行った。「あの日と同じように笑ってよ」なんて言っていて胸の奥がキュッと苦しくなった。私は「あの日」を記憶の中から探した。いや、「あの日」という言葉を聞いた時点で探さなくてもいくらでも出てきた。過去の思い出になってしまった「あの日」の中の自分はいつも笑っていた。今の私は、笑ってなんて言われても笑えなかった。だってもう「あの日」には戻れないじゃん、違うじゃん、なんて可愛げのないことを思っていたし、だけど心のどこかでそんな風に過去を引きずる自分に嫌悪感も抱いていた。

 

 

 

 

あれからそのバンドは未だに見に行けていない。あんなに瞬時に飛びついていたSNSの通知も全て外した。だけどフォローは外せなかった。たまに見かけてはキュッと苦しくなる。

 

 

 

曲もかなり聞かなくなった、聞くと思い出してしまうから。聞かないようにしているのは自分だけど、好きなのに聞けないなんて酷だなぁと思う。だけどその曲のことはずっとずっと好きだ。

 

 

この曲が初めて披露された時のこと、この曲のルーツを知った時のこと、この曲で目が合ったんだよな、この曲で初めて彼らに出会えたな、この曲で………  思い出がありすぎる。困るほどに思い出が多すぎるのだ。

 

 

 

またいつか……と心のどこかでは期待している自分もいれば、もっと時間が経てば、過去のことは清算して、クリーンな気持ちで見れる日か来るんじゃないか、って思う自分もいる。

 

 

 

だけど今はまだそんな大人になれない。周りと同じようには応援できない私を許してね。前を向いている貴方たちに着いて行けなくてごめんね。だけど本当に本当に好きなんだよ。あの時と同じ熱量ではないけど、きっと好き。ちょっとみんなとは違う好き。好き「だった」。過去も今も丸ごと受け入れるには、まだまだ時間も心の余裕も足りないけど。もしかしたらずっとこの気持ちは捨てきれないかもしれないけど。それでも好き「だった」貴方たちのことを、心のどこかで応援する気持ちは残っている気がします。

 

 

 

 

誰かを応援し続けることって時が経てば経つほど難しいよね。全てを包み込むような心の広いファンでありたいな〜とも思うけれど、一生なれない気がする。その度に行き場のないごめんねを心に溜める。だけどそれが溜まれば溜まるほど、純粋に応援するのが難しくなってしまうから困っちゃうね。

 

 

 

何を言いたいのか分からなくなってしまったけど、好き「だった」になってしまっても、私はその時の好きは一生忘れないよ。これからのことは向き合えるようになりたいなとは思うけど、難しいなあって思ってる。何かを好きであり続けるって難しいね。ってお話でした。…纏まりがなければ、オチもない話になってしまってごめんなさい。その時感じた感情は良いことも悪いこともなるべく残しておきたいので、思うがままに打ちました。

 

 

そろそろ寝ようかな、おやすみなさい。